この時間は予約ということで

　名札を首から下げてるのは大学の関係者、とりわけ常駐の職員以外の外部講師や委託職員などの証だ。

「はい。僕は葛木(かつらぎ)と言います。ここのお隣、2号棟の保健センターで週に2度、カウンセラーとして生活相談室にいます」

「そんな人が何でここにいるんですか。カウンセリングルームにいなくていいんですか」

「この時間に予約は入っていませんから、遅めのお昼ご飯を食べてきたところです。そんな時、こんな天気だと言うのに、柵に手をかけて下を向いているあなたをみかけたので、思わず声をかけてしまいました」

「……そうですか」

　葛木と名乗った青年は、数歩結花に近付いて微笑みながら問いかける。

「失礼ですが、あなたのお名前は？」

「1年の、園原結花です」

「園原さんですね。……今は空きコマですか？」

「そうですけど」

「空きコマはいつもここに？」