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「いつもではないです、たまに来ます」
「たまに、ですか。僕は4月にここに赴任してきたんですが、その間に何度もここに立っているあなたをみかけていました。……ここで、何をなさってたんですか?」
「わたし、目をつけられてたんですか」
「目をつけるだなんてそんなことは」
「死にたそうだとカウンセラーとしての勘でも働いたとか?」
「えぇ、まぁ、そういうことにおきましょう」
「……そうですか」
「それより、質問に答えていただけませんか。ここで何をなさってたんですか?」
「……別に、何も」
「ああ、では質問を変えましょう。……死にたいんですか?」
(思ったよりストレートな質問が飛んできたな……)
「し、死にたいとは思ってません。そんな勇気も度胸もない、です。それに……」
「それに、何ですか?」
「死にたいとは、ちょっと違うんです。今の気持ちをうまく言葉にできなくて……」
葛木は俯いて言葉をつまらせる結花に、さらに数歩近付き隣に立ち、傘で隠れた顔を少し覗き込む。
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