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プロローグ
ここは、どこだ?
なんだか、身体が芯から冷える。手足の感覚がない。まさか、俺は死んでしまったのか?いや、意識があるということ、寒さを感じているということは、死んではいない証拠だ。
ならば、俺は今、どういう状態だ?
冷たい。まるで冷凍庫にいるようだ。
ふと、目が覚める。
頭が痛い。鈍器で殴られたような痛み。
俺は後頭部に手をやる。髪の毛に血の固まりがこびりついていた。
周りを見回す。全面、白い壁。天井も白い。
通用口と思われる穴から外の光が僅かに空間を照らしているだけだ。
とにかく寒い。とりあえず、暖がとれるものはないか、俺は周りを見回す。
すると、ダウンコートが置いてあった。これは都合がいい。今はこいつがあるだけで、百人力だ。
すぐにダウンコートを着こむ。ああ、あったかい。俺は一息ついた。呼吸をする度に、喉が痛かったが、ダウンコートを着たおかげか、少しばかり、呼吸が楽になる。
しかし、ここはどこだろう?日付も時間もわからない。外部と遮断された冷凍庫。俺はいつから魚になった?
ポケットの中をまさぐる。タバコにライター、果物ナイフ、そして、携帯電話。携帯電話は完全に充電が切れていた。電源が入ったとしても、おそらく、アンテナは立たないだろう。外部と連絡をとるのは、不可能だろう。
冷静になると、次に恐怖が這いあがってきた。誰にも発見されずに死ぬという恐怖だ。
俺は子どもの頃、無人島に流されて、誰にも発見されずに亡くなっていく男の話を読んだことを思い出した。子供心に、なんて怖い話なんだと思った。幽霊や怪物が登場する話よりも、数倍恐ろしい話だった。
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