ナイフの女

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ナイフの女

「へえ。  ローズアイだって。  マロンのセンスかい」  女はサバイバルナイフを丁寧に拭いて、(さや)に収めた。  カーキ色の作業着を着ているので、整備兵のような格好である。 「そうさ。  スラッシュ、良い名前だろう」  ゆっくり身を起こしたスラッシュは、24歳の若い娘である。  だが眼は爛々とした光を(たた)えている。  ナイフマニアで、扱いもうまいから自分でつけた名前である。 「私はご免だよ。  ロマンチックな名前で四六時中呼ばれたら、ナイフ(さば)きも鈍るだろうさ」  ふんと鼻を鳴らして、マロンを(にら)みつけた。 「で、腕はどうなんだい。  足手まといがいると、こっちまで死ぬ羽目になる」 「あのレックスがお墨付きをくれたそうだ。  そして、ゼツとラルフの子どもだ」 「なんだって ───  サラブレッドじゃないか」  武器庫で手ごろな拳銃を物色していたマロンは、一丁をテーブルに置いた。 「ベレッタPX4・ストーム・サブコンパクト ───  使用弾薬9ミリx19ミリ、装弾数13発、全長158ミリ、重量740グラム。  相場は650ドルってとこか」 「拳銃マニアだね。  みんな頭に入ってるのかい」  もう一度手に取って、銃口を天井に向けたまま眺めている。  黒光りする銃身。  中にはステンレスのバレルが仕込んである。  拳銃としては少し大振りで、弾倉が大きい。 「うちで一番人気のモデルだ。  威力があって弾込めの手間が少ない。  本気でドンパチやる奴なら、こいつを選ぶさ」 「へえ。  私もそいつにしようかな」  スラッシュは内もものホルスターに一丁納めた。
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