獅子たちの邂逅

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獅子たちの邂逅

 マロンは黙ったままハンドルを握っていた。  トレーラーやタンクローリーを追い越し、観光バスに阻まれて舌打ちをした。 「まあ、急ぐ道じゃあない。  ここらで自己紹介といこうか」  隣で外を眺めていた女が向き直ってまじまじと見る。  ガラクは少しもじもじとした。 「ホントに若いね。  私も近いけど。  じゃあ、『スラッシュ』と呼んでちょうだい。  本名はコンテッサ・ドナドニ、24歳、コードネームは得意なナイフ術から自分でつけた。  きっと女の私がいるから、この小隊に入れられたんだろうね。  ガルーサも、それくらいは気を遣える企業さ」  さっきまでの厳しい顔が消えて、笑顔がこぼれていた。  ずっと緊張感が消えなかった心に、少し温かみが差し込んできた。 「私、ローズアイです……  本名はガラク・ノエル・オリベール。  レックスの紹介で来たんです。  右も左もわからないので、いろいろ教えて下さい」  助手席の男が振り向いた。  興味津々と言った眼でガラクを見てから、 「フェリクス=オマル・ガライ・ガバラ。  コードネームはゲバラだ。  マロンの1コ下で32歳。  レックスだって ───  サイン貰いたいな」 「おいおい、アイドルじゃないんだぞ。  まあ、伝説のアーミー、レックスはみんなの憧れだ。  1発で2人倒すって本当なのか」  マロンが口を挟んできた。 「えっ。  そうですね。  1発で2人倒してますね」  真面目に答えるガラクに、一同は笑ったり、感心したりした。 「そうか。  そのレックスのお墨付きのローズアイにも期待だな。  俺の本名はポンシオ・エステバン・ロロンだ。  階級は大尉で小隊長。  隊長らしいことを言っておくと、戦場では仲間が何よりの財産になる。  金も肩書きも戦場には持って行けないからな」 「はい。  ありがとうございます」  張りつめた空気が和らいだ。  これから一蓮托生で戦う仲間たちだ。  早く役に立つ戦士にならなくてはならない。  ベレッタの銃身を触ってみた。  普通の一般人だった自分が、軍隊に入って何を成すのだろうか。  俯いて眼を閉じた。
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