1人が本棚に入れています
本棚に追加
獅子たちの邂逅
マロンは黙ったままハンドルを握っていた。
トレーラーやタンクローリーを追い越し、観光バスに阻まれて舌打ちをした。
「まあ、急ぐ道じゃあない。
ここらで自己紹介といこうか」
隣で外を眺めていた女が向き直ってまじまじと見る。
ガラクは少しもじもじとした。
「ホントに若いね。
私も近いけど。
じゃあ、『スラッシュ』と呼んでちょうだい。
本名はコンテッサ・ドナドニ、24歳、コードネームは得意なナイフ術から自分でつけた。
きっと女の私がいるから、この小隊に入れられたんだろうね。
ガルーサも、それくらいは気を遣える企業さ」
さっきまでの厳しい顔が消えて、笑顔がこぼれていた。
ずっと緊張感が消えなかった心に、少し温かみが差し込んできた。
「私、ローズアイです……
本名はガラク・ノエル・オリベール。
レックスの紹介で来たんです。
右も左もわからないので、いろいろ教えて下さい」
助手席の男が振り向いた。
興味津々と言った眼でガラクを見てから、
「フェリクス=オマル・ガライ・ガバラ。
コードネームはゲバラだ。
マロンの1コ下で32歳。
レックスだって ───
サイン貰いたいな」
「おいおい、アイドルじゃないんだぞ。
まあ、伝説のアーミー、レックスはみんなの憧れだ。
1発で2人倒すって本当なのか」
マロンが口を挟んできた。
「えっ。
そうですね。
1発で2人倒してますね」
真面目に答えるガラクに、一同は笑ったり、感心したりした。
「そうか。
そのレックスのお墨付きのローズアイにも期待だな。
俺の本名はポンシオ・エステバン・ロロンだ。
階級は大尉で小隊長。
隊長らしいことを言っておくと、戦場では仲間が何よりの財産になる。
金も肩書きも戦場には持って行けないからな」
「はい。
ありがとうございます」
張りつめた空気が和らいだ。
これから一蓮托生で戦う仲間たちだ。
早く役に立つ戦士にならなくてはならない。
ベレッタの銃身を触ってみた。
普通の一般人だった自分が、軍隊に入って何を成すのだろうか。
俯いて眼を閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!