兵士として

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兵士として

 国境に到着した4人は、カーキ色の作業着を身につけライフルを肩にかけた。  PMCは、自由に服装を決めて任務に当たることになっている。  いわゆる迷彩服を着た軍隊と違い、各々の任務に応じて使い分けるのである。  その点作業着は、街中にいても違和感を感じないし、兵士としても格好がつく。  だからPMCのメンバーに人気があるのである。  検問所近くの小屋に陣取って、一息ついていたときだった。  40代とみられる女兵士がガラクに近づいてきた。  小さく手を振って、笑いかける。 「はあい」  唖然として、口が半開きになった。  マロンが進み出て、 「失礼ですが、ガルーサの社員でしょうか。  社員証を見せてください」  関係者以外立ち入り禁止の表示をものともせずに、ズカズカと入り込んでくる。 「あんたは、小隊長さんかい。  私はガルーサ社のゼツ少佐だ」  一同は弾かれたように立ちあがり、敬礼をする。 「ふふふ。  よく訓練されているな。  ほら、社員証だよ」  ガラクは一緒に敬礼したものの、腰を抜かして座り込んでいた。 「命あっての物種だ。  ガラク、許可は取ってあるから一緒に行こう」  抱き起こすようにガラクを立たせて、連れて行ってしまった。  しばらく歩くと、ヘリポートに着いた。  中央に小さな戦闘機が見えてきた。 「ちょっぴり重量オーバーかも知れないから、慎重に離陸しないとだな」  ずっと無言のまま付いてきたガラクは、タラップを登り、後部座席に滑り込む。 「ほら、ヘルメット被って」  コックピットから身を乗り出して外のクルーへ向け、 「燃料は満タンにしてあるか。  外部燃料タンクも確認してくれ。  ガス欠になったらタダじゃ置かないぞ」  ゼツは後ろを振り向いて言った。 「こいつはF-35BライトニングIIだ。  最新鋭機だぞ。  短距離離陸と垂直着陸ができる。  ヘッドマウントディスプレイでどの方向でも死角がほとんどない。  6方向についているカメラがあるからな」  ペラペラと喋りながら、衝撃が身体を突き上げた。  離陸態勢に入ったようだ。 「戦闘機の操縦は私も日が浅いんだが、父さんは凄いぞ。  小隊を引き連れて敵の基地に向かっている頃だ」  されるがままになっていたガラクは、ぼんやりとした意識の中で小さくなっていくヘリポートを眺めていた。
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