7人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はその朝、妙な夢で起こされた。
はっきりとは覚えていないが、何かに襲われるような夢だった。
「…う~ん…ゲームのし過ぎかな?
でも、危険な相手ではなかったような…」
昨日の夜もゲームをしてから寝たので、そんな夢を見たのかと思った。
「まあ、ちょっと早いけど…」
二度寝をしようと思ったが、休みで花見がてら散歩をするつもりだったのでちょうど良かった。
「早起きは何とやらと言うし…」
朝食を後回しにして散歩に出る。
駅に向かう桜並木の街道。
道の両側には数日前に満開になったソメイヨシノが並ぶ。
その下をゆっくりと歩く。
日曜日の朝早くと言うこともあり、歩行者も車もほとんどいない。
「桜の一人占めか?」
満開の桜も風に煽られ、ちらちらと散りはじめている。
「今年はパッと咲いてパッと散るのか…
それが一番、桜らしい…」
桜を見上げそんな独り言を呟く。
駅まで歩き、反対側に渡り帰ろうと思った。
その刹那、一陣の風が吹いた。
桜吹雪に目が奪われる。
前に向き直ると女性の姿が目に留まった。
「………!」
言葉が出なかった。
淡いスカイブルーのワンピース、白い肌に後ろで一纏めにした栗色の髪…。
その女性は桜吹雪舞い散る中、ゴールデンレトリーバーを連れて歩いている。
時折、上を見上げ物憂げな表情を見せた。
朝の木漏れ日を浴び、桜の花びらに彩られた女性は、この世の者とは思えないくらい美しく見えた。
最初のコメントを投稿しよう!