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雨よ降れ
お母さんが「もうやめて!!」と声を上げる。
「やめねーよ! コイツは俺の命令に背いたんだ」
お父さんに頰をぶたれ顔中あざだらけ
となっていることだろう。
お父さんは私の服を脱がそうとした。
「お父さんっやめてっ!!」
わたしは必死に抵抗してお母さんに
目で助けを求めた。
「あなたっ!やめて!!
わたしが、わたしが脱ぐから」
「えっ、お母さんっ、ダメだよっ」
「ごめんね、舞」
お母さんが悲しげにそう言った後、
お父さんがソファにお母さんを
押し倒してキスをする。
「んーーー、んむぅーーっ!!」
お母さんが嫌がっている。
あぁ、雨よ降れ!
雨が降ればお父さんから解放される。
先日分かったのはお父さんが雨アレルギー
だということ。
一緒に出かけてたら雨が降ってきて慌てて
傘をさしたら雨が降れたところに
蕁麻疹ができていた。
雨が降れば、お父さんは死ぬ。
そうすれば、私たちは解放されるんだ。
だからお願い。
雨よ降って
その時、わたしの願いが通じたのかザーっと
雨が降ってきた。
わたしはお父さんからお母さんを引き剥がし
ニッコリ笑った。
「お父さん、気分転換に買い物行かない?」
お父さんは「あ?」とイライラした様子で
こっちを見る。
「あぁ、なんか最近イライラするんだよな。
気分転換か、いいぜ」
お父さん、ごめん。
気分転換なんて嘘だよ。
わたしは玄関で傘を開こうとしている
お父さんを雨の中に突き飛ばした。
「う、ぐ、あぁぁぁっ……舞、なにを」
「ごめんね、お父さん。お父さんがいない方
がわたしたちは幸せに暮らしていけるの」
お父さんの皮膚に発疹ができていく。
そして、それは徐々に全身に広がり、
呼吸困難でお父さんは命を落とした。
やっと、死んでくれた。
でもなぜか悲しい。
いや気のせいだ。
お父さんはわたし達に暴力を振るってきた。
それはきっと一生許せない。
だけど、わたしお父さんに愛されたかったよ。
「さよなら、お父さん」
わたしはそう呟いて、家の中に入った。
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