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警察署に行く。
事件現場にいたのは私だけ。
沢山同じことを言われた。
「覚えてることを話してほしい」
「どんな些細なことでもいいんだ」
「もう一度よく思い出して」
「辛いだろうけど、解決するために」
「お母さんのために」
「他に思い出したことはない」
何度も何度も何度も、同じことを言われた。
何度も同じ話をする。
何度も同じ写真を見せる。
何度も……。
それなのに、今になっても母の事件は解決しない。
私が父の事件に関わって、その犯人が母の事件に関することを少しでも知っていればいい。
そう思う。
目が覚める。
時計を見れば昼の12時だった。
あれから寝ていたのだろう。
リビングへ向かう。
机の上にメモがあった。
『仕事に行ってきます。最近は無理させたからゆっくり休んで。ほしいものがあれば買ってくるから電話してね』
そのメモを読んでラップをかけられたご飯を温める。
すると、インターホンがなる。
私があの日から怖いのはこの部屋でも、クローゼットでもなくて、インターホンが鳴る事。
あの日を思い出してしまうから。
恐る恐る玄関へ向かう。
鍵をこじ開けてる音は聞こえない。
「那結菜、いる?」
声が舞香だ。
ドアを開ける。
「舞香……」
「那結菜!」
そう言って飛びついてくる。
舞香は私がインターホンを恐れていることを知っているからインターホンを押したあと声を掛けてくれる。
「どうしたの……?舞香」
「那結菜が体調崩したって聞いたからプリント届けに来たの」
そう言われ思いだす。
今日は先生達の職員会があるから午前授業だったのだ。
「ありがと」
そう言いリビングへ行く。
「舞香、お昼食べる?」
私だけだべるのも申し訳ない。
「頂こうかな」
舞香は変に気を使わない。
逆にありがたい事だ。
「パン?」
そう聞くと、うん、と答えた。
舞香はお米よりもパン派だ。
パンを焼いて、ジャムとマーガリンを差し出す。
2人で座ってお昼を食べる。
「ねぇ、那結菜……」
舞香の方に顔を上げる。
「最近は、ごめん。周りが見えてなかった……」
「私こそごめん、だよ」
喧嘩をしても結局は直ぐに仲直りしてしまう。
それから色んな話をした。
気がつくと、午後2時になっていた。
舞香はこの後習い事だ。
大変だな、とは思うけれど舞香が望んでやっていることらしい。
それから少しして、ドアが開いた。
「ただいまー」
お父さんだ。
「おかえりー」
「体調は大丈夫か?」
「うん」
私は母の事件を知りたい。
だから、父の事件に関わる。
これまでも。
これからも。
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