23人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
ほのぼのと笑い合っていると、目の前の滝壺にドーンと水柱が上がった。
何事かと思ったら、手足を縛られた若い女が溺れている。
「またあの村か。滝壺で遊ばないでって言ってるのに」
「違うわモリヤさん、あれは雨乞いの儀式よ! 忘れたの⁉︎」
「あっ! そうだったそうだった。って、あの村また旱魃始まったの? やだなあ、雨乞いなんかされても僕、うまく降らせる自信ないよ?」
モリヤさんは一度村を水没させたトラウマで、村にあまり雨を降らせなくなっていた。そのせいで、また今年も生贄が寄越されたようだった。
「美女を送ればいいってもんじゃないのになあ。僕ってそんなにエロい神だと思われてるのかな……傷つくなあ」
迷惑そうにモリヤさんが女を助けに行く。
やがて、二人がびしょ濡れで戻ってきた。
「どうも〜! 村一番の美女、ミツでーす!」
女は古風で日本人形のような見た目の私とは真逆のタイプだった。髪は派手な茶髪に染められ、肌はガングロで三重くらいのつけまつ毛をして、爪の一本一本には違う色のネイルをしていた。
これが村一番の美女?
村も方向性が変わったものだ。
「なんか、雨? 降らせてほしいんすっけど! つーかマジイケメンなんだけど。ヤバ! 超ウケる〜!」
モリヤさんはそんな彼女の顔を興味津々に見つめていた。
もしかして、私よりこんな女の方がタイプだとか言い出さないでしょうね?
「モリヤさん……」
「そのまつ毛、滝壺ダイブしたのによく取れませんでしたね?」
良かった、彼がボケで。
最初のコメントを投稿しよう!