神はサイコロを

運動会は中止になってほしい方だ。
どうせいつもビリだし集団ダンスも楽しいと思わない方だ。

いつもなら今の時間一緒にテレビを見ている母がずっと台所にいる。
明日の運動会のお弁当を用意している。
明日運動会があるかどうかまだわからないのにだ。

ときは昭和である。
運動会には親が大量の手作りのお昼ご飯を持って応援に行く。前日の夜から必死で用意しなければならないレベルの。
でありながら運動会が予定通り開催されるかどうかは当日の早朝6時にわかるのだ。

大体の場合予定通りで、子供が一人だけならその確率が高いだろう。
しかし我が家は三人分のチャレンジ。今までは難なく快晴を引き当てたが、今回は雲行きが怪しかった。それでも開催されるかもしれない場合に備えて母は弁当を詰める。

明日雨が降りそうなのは、私が運動会なくなってほしいからかもしれない。
上の姉二人は運動が好きで運動会を嫌っていなかった。姉たちが卒業し、今年は私しか運動会に出ない。

今ならそんな頑張って作らなくてもスーパーで買ったらいいよと言うのだが、何せ昭和である。そんな選択肢はまだ欠片もない。

私が寝ようとする時間になっても母はまだ台所にいた。

運動会は嫌だ。
でも中止も嫌だ。

雨よ降れ
いや降るな

神様決めてください！
無理矢理目をつぶっているうちに眠りに落ちた。そして運命の朝が来る。