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雨が校庭に無数の波紋を落とす。
雨音には1/fゆらぎという癒しの効果があるらしい。
今の私には雑音でしかないけど。
雨が嫌いになりそうだ。
玄関の軒先で、この白い滝の中に突っ込むタイミングを見計らう。
くそっ、椎名くんめ。
一緒にいたかったのに。
そう思っていたのは私だけか。
そりゃあ私は椎名くんにとってただの友達かもしれないけど。
でも二人で映画見たり、カフェに行ったり、今まで散々遊んできたのに。
私なんて可愛くないよ、確かに。
だけど、だけどさ。
「あれ? 藤川さん?」
むしゃくしゃしていた時、横から声をかけられた。
そこにいたのは森島くんだった。
茶髪でスマートなサッカー部の、絵に描いたようなイケメン。
椎名くんに比べたら全然森島くんの方がいい。
「傘ないの? もし良かったら、家まで送ろうか」
「えっ。いいの?」
「もちろん。藤川さんなら大歓迎」
ほら、全然いい。
優しいし、私のことを女の子扱いしてくれる。
「じゃあ行こうか」
森島くんと相合傘で帰り始める。
そっと後ろが気になって振り返ったら、椎名くんがいた。
私を追いかけてきたのかな?
いや、そんなはずないか。
私たちのことを呆然とした顔で見ていたから、べーっと舌を出してやった。
ざまあみろ。濡れて帰れ、椎名くん!
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