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「藤川って、ほんと男を見る目がないよな」
「そんなことないもん」
「森島の下心に気づかなかったくせに。どこまで鈍いんだよ」
歩き出した相合傘の下で椎名くんはずっと私に文句を垂れている。
あんまり言うから、私もつい言い返しちゃう。
「はいはい、鈍くてごめんなさいね!」
「可愛くねえわマジで」
それは私もそう思う。
助けてもらった上に、家まで送ってもらっているんだから、もう少し素直になってやるか。
「椎名くん」
「ん?」
「ありがと」
雨に消えそうな声で呟いてチラッと横目で見たら、椎名くんは頬の筋肉をピクピクさせて複雑な表情を浮かべていた。
「どうした椎名くん」
「何でもない」
「もしかして、今私のこと可愛いと思った?」
「………………いや」
すごい間があったけど。
素直じゃないな。
とりあえず追及しないでおく。返事を聞いたら、こっちが照れちゃいそうだから。
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