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少し埃の被った、それを娘は手に取った。踊るような速さで、ステップを踏むように、四角い店内に対角線を引いて斜めに横切り、スポーツ万能な花は瞬く間に、擦り抜ける。回転する椅子に軽く飛び乗って笑い出した。
「きゃー! パパったら、乙女な趣味ね!」
「うるせー。何とでも言え。可愛いだろう」
そういやメリーゴーランドみたいだって、まだ開店したばかりの店で、無邪気な愛は、小さな娘の花が真似するのも御構い無しに、一緒になって椅子の上で、回っていたっけ。くるくるくるくる。目を回して笑い転げて。
「ママの宝物ね!」「パパとママの宝物さ」
一人娘はクォーター。俺と似た容姿だが、性格は怖いくらい嫁の愛と似て、生き写し。くるくる回っている椅子を止め、注意する。お転婆な花が赤い舌を出すのを呆れて見た。悪戯っ子で世話が焼ける。憎めない笑顔だ。
「大切にしなくちゃね」「娘のお前もな?」
「そうだよ、落として壊さないようにね?」
頬を染める少年の瞳の色に注視しながら、仕種から読み取った俺はドキドキしている。
時折、父親として複雑な心境でもあるが、怖いよりも嬉しい気持ちが超えていくのだ。胸があったかくなる。初恋っていいもんだ。
蓮君は花のことが好きなのかも知れない。
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