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翼猫の置物をパーカーのポケットに入れ、ブリキの如雨露を抱えて駆け出し、お転婆。
「SF作家さんのお話に出てくる。有名だよ」
「知っていたら、そう呼んだに違いないわ」
玄関の凌霄葉蓮の植木鉢に水を遣る花と、距離があっても平気で話す蓮はムキになり、軽く口喧嘩するから前を向かせるのに大変。
「やっぱ、不思議ちゃんの言うことは違う」
「嘘じゃないってば。本を貸してあげるよ」
お互いに何も気がついてもいなさそうだ。青春だよね。甘酸っぱくて見ていられない。男より女の方が精神的に大人とよく聞くが、花より蓮の方が精神年齢が高いのは明らか。まっ、夢見がちな子供だからトントンかも。
「透明な霊に憑依されているんでしょう?」
「それで翼が生えた」「正体はゴースト!」
俺には、こっそり聞き耳を立てていても、よく分からない空想の話を二人はよくする。
「壊すなよ、花。ママのだから大切にしろ」
「はーい、パパ! 私にも、ちょうだい!」
「いい子にしていたらな。こら、ストップ」
頭の上に乗せて、白線の上を歩くように、モデルウォークしてから、両手に受け止め、悪気なく翼の生えた黒猫を手垢塗れにする。盛り上がるほっぺに齧りつきたくなるほど、無邪気に笑う花は、お喋りに夢中で可愛い。
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