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大きな屋敷で中庭も広く、家では基本的に皆着物を着ている。昔ながらの名家という雰囲気で、色々しきたりなどに厳しかったが今は家族らしい事など何一つ無いどころか会う事も無い。母様も男だがΩで父様との間に兄様と私を産んだ。
私の番の旦那様は私以外にも番をもってそちらを溺愛しているというのを風の噂で聞いた。それを別段悲しいと思う事も無いが、時折項の歯型を指でなぞる。
ある日父様に番だと案内された男性は逃げる私を組み敷いて、強姦まがいに犯しながら首筋を噛んできた。あの日の恐怖は忘れたことは無く、今でも夢に見てしまうほどだ。
私の食事は使用人が粥を作って持ってきてくれて、面倒臭そうな顔をしていて私に居場所など無いと言っているように思えた。
薄暗く締め切られた襖を開けて外の庭を見つめていれば風に桜の花びらがヒラヒラと舞っている。今日は調子が良いなと思っていれば塀を飛び越えてサッカーボールが入ってきて数回跳ねて転がった。
それを見てから塀を見ればひょこっと手が見え、手の主が顔を出した。焦げ茶の髪に深く美しい緑の瞳の爽やかそうな青年で、私と目が合いキョロキョロと見回して私以外の不在を確認すると乗り越えて入ってきた。不法侵入と言うやつではないのだろうか…?
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