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 幼稚園の頃、近所に住む小学生の男の子が好きで、何回かバレンタインのチョコをあげたことを覚えている。  完全な片思いだったから、ほとんど話したことはなくて、ただわたしが小学一年生になったとき、集団登校があり、同じ小学生に通うその男の子に守ってもらうように登校して、子供ながらにすごくせつない思いを抱いた。  そんな、ませた子供だったわたしは、あるときふと疑問が芽生えて、お父さんとお母さんに、子供はどうやってできるの? と聞いたことがある。  両親は、来るべき時が来たか、でももうこんな早く? といった感じで目を見合わせながらも、お父さんがやさしい口調でこう言った。「大人の男の人と女の人の好きな人同士が、おしりをくっつけると、子供ができるんだよ」  このとき、おしりと聞いて、なんだかどきっとした。今思えば、親なりにそう嘘でもなく、完璧な真実でもない、遠回しな正義をそっと教えてくれたのだろう。  へえ、そんなことで? 服を着たままなのか、それとも脱いでからなのか、どっちなんだろう、まあ、どっちでもいいや、と頭の中には不思議が浮かびながらも、「じゃあ、大人になったらけんご君(その好きだった年上の小学生)とおしりくっつけて、子供作る!」と高らかに、嬉々として、両親に宣言した。お父さんとお母さんは微妙な反応をしながらも、やわらかく微笑んでいた。  
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