ニセモノ彼氏

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ニセモノ彼氏

唯斗(こいつ)、好きな奴がいる」 7月。初夏の陽射しがコンクリートを打ち付ける2階の渡り廊下。彼が教室を出たところを追いかけて呼び止めた。 「好きです」とか「付き合って下さい」じゃなくて「ねぇ、今度一緒に遊ばない?」的な軽いノリで重くならないように。とりあえず夏休み前に連絡先を交換できればいいな、なんて思っていたから。 なのに、本人じゃなくてその隣にいた男子(ともだち)に断られるなんて──。 「私さー。八巻くんに言ったんじゃないんだけど」 「告白だろう?」 「違うし、皆で遊ぼうよって声かけただけ」 「はぁ。お前、唯斗のこと好きだろう?いつもチラチラ見てるし、気持ち悪い」 「好きなわけ…………、」 "好きなわけない"とは言いきれなくて、ぐっと口をつぐんだ。 「残念。唯斗は今、恋人募集してないんだ。な?」 「花倉さん、ごめんね」 告白さえしてないのに振られたみたいです──。
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