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「壮真くん、震えちゃって可愛いんだけど!」
「コイツ、こんな顔して怖いの苦手だからねー」
ケラケラと爆笑する唯斗くんのお姉さんは、彼の笑い方とそっくりだ。
私と唯斗くん、壮真とお姉さんのペアの順番で入ったのだけど。
お化け屋敷から出てきた壮真はマジで悲惨だった。
顔面蒼白、げっそり状態で彼女の背中に隠れて震えているから、私も声を出して大笑いしてやる。
「あは!壮真ヤバー、格好悪ーい!」
「……うるさい」
「そんな情けない顔で怒られても全然怖くないんだけどぉ」
夏休みという事もあり、気が緩んでいたのだと思う。クラスの男子の部屋に男と男と元男と眠りこけるなんて、何されても文句なんて言えない。
昨日はそのまま壮真のアパートに行って4人で遊んだ。唯斗くんのお姉さんがお酒を買ってきてくれて、皆で飲みながらゲームをやって過ごし、いつの間にか眠っていて朝になっていたのだ。
ミュートにしたままのスマホには、家族からの着信とメッセージが何件も入っているから"しまったと"後悔しても遅い。
「ふぁ、無断外泊はマズッたかな……」
メイクも落としていない寝起きの目を擦りながら小さく呟く。と同時に、目を瞑ってスースーと寝息を立てる彼女の顔が目に入った。
元男の人。整った顔立ちをした彼女の頬にそっと手を触れた。
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