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「どうして泣いてた?」
唯斗くん達が帰って私と壮真が部屋に取り残された。
お姉さんは仕事で、唯斗くんも「今日は用事があるからー」と一緒に朝早く出ていったのだ。
「泣いてない」
「いや、泣いていた」
「泣いてないってば」
「俺は見た。確かに泣いていた」
湿った布団から腰を上げようとした時、腕をグイッと引かれ壮真の隣に尻餅をつく形となる。そのまま顎をと上に上げられ、真っ直ぐな壮真の瞳が目に入った。
「前に話していた美麻のお姉さ……」
「しつこい!壮真に関係ないっ!!」
自分でも驚く程、大きな声が出た。
壮真の目がピクリと開いて、沈黙と同時に部屋の中が静まり返る。
珍しい。壮真が動揺している。
私が落ち込んでいると思って声をかけ、どう接するべきか戸惑っているのが分かった。
いつも無表情で私のこと興味ない顔してるくせに、眉を下げて情けない表情しちゃっておっかしーの。
「なぁに?壮真、私のこと慰めてくれるの?」
「…………あぁ?」
「フリでも彼氏ならぁ彼女が不安定になってるって気が付いたら、何も言わないで優しく抱きしめるんだよ?ほら」
両手を広げて喉を鳴すよう甘い声を出せば、壮真が呪文にでもかかったように私に吸い寄せられてきた。
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