15人が本棚に入れています
本棚に追加
昼食を食べ終わったら、やはり満腹のせいで眠くなった。二階の部屋に行ってまどろむ。電話の音で目が覚めた。祐樹はスマホを手に取る。久恵からだった。
「もしもし久恵さん?」
「あ、祐樹くん。実家に帰っているんだって。私は帰る予定はなかったんだけど、祐樹くんが帰っているのなら行こうかな。高速道路を使えば四時間くらいだし。レンタカーを借りて今日の六時くらいには着けると思う。祐樹くん、剣持の家で夕飯を食べていきなよ。私、家に連絡をいれておくから」
それは昨日に引き続き悪い。
「昨日はお風呂を借りちゃったんだ。今日また夕飯までご馳走になれないよ。明日、町に出てコーヒーでも飲もう」
「そう? 今日は意味のある日なんだけどな」
それはどういうことだろう。祐樹に八月十四日の思い出は特にない。
「とりあえず、気を付けて帰ってきなよ。渋滞もしているだろうし」
祐樹は電話を切った。三泊に変えようかな。食事のときにでもみんなに言おう。
昼寝の途中だったがすっかり目が覚めた。祐樹は一階に行く。母が「スイカ食べる?」と訊いてきた。まだお腹はいっぱいだが喉は乾いている。スイカをもらおうか。
縁側で父と並んでスイカを食べる。何年ぶりだろう。
「お父さんとスイカを食べるのは久しぶりだな」
「ああ。お前はませていたからな。親とも会話をしてくれなかった。高校一年生で女を知っていただろう」
突然言われたのでスイカを誤飲しそうになった。
「お父さん、いきなりなんだよ。ませていたって、今なら高校生で女の子と付き合うのは普通だよ」
父は遠くを見る。町の方角に入道雲ができている。
最初のコメントを投稿しよう!