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祐樹は隣の和室に行って仏壇の前に立った。仏壇には花が飾られているほか、桃やお菓子が置いてあった。祐樹は線香に火をつけて線香立てにさすと手を合わせた。
夕飯までたっぷり時間があるので外を散歩することにした。母に声をかける。
「母さん、夕飯まで外を散歩してくるよ」
母が台所の方からやって来た。
「それじゃあ、剣持さんの家に持って行ってもらいたいものがあるの」
剣持とは隣の家だ。祐樹の一歳上の娘が住んでいたが東京に出たため、夫婦二人で住んでいる。
「いいよ。歩いて三十分だ。ちょうどいい距離だよ」
「じゃあ、ちょっと待っていてくれる」
母はそう言うと台所に戻って行った。母も五年前とそう変わっていない。白髪は染めているのだろう。赤っぽい髪だった。祐樹が玄関でぼんやり立っていると母がメロンを持って戻って来た。
「これ、つまらないものですがって言って」
「分かった。じゃあ行ってくるよ」
下り坂になっている道路を歩いて剣持の家へ向かう。蝉が大音量で鳴く。都会に比べて涼しいがそれでもちょっと歩くと汗が出てくる。祐樹は首にかけたタオルで汗を拭いた。
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