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仕方がないので土砂降りの中、剣持の家へ向かった。道路は川のようになって靴の中はびしょ濡れだ。剣持の家に着いたときはもうバケツの水をかぶったようだった。
「あらあら、祐樹くん、とんだめにあっちゃったわね」
妻の加奈子が言う。加奈子は祐樹の母と同じ年齢くらいだろう。
「家を出てくるときは晴れていたので……」
「主人の服ならあるわ。シャワーを浴びて着替えて帰りなさい」
そうさせてもらうより他ないだろう。祐樹は「すみません」と言った。
服を借りる夫の義一はお盆休みで家にいた。挨拶だけしようと祐樹は加奈子にお願いをする。
「シャワーを浴びたらご主人に挨拶させてください」
「言っておくわ。さ、体を拭いてあがって」
祐樹は渡されたバスタオルで頭から足までしっかり拭くと玄関をあがって案内された風呂場に行った。タイルでできた浴槽で掃除が行き届いていた。
熱めの温度で頭からシャワーを浴びる。そういえばさっき会った男の子は何だったのか。祐樹の家の方角に走っていったがその先は山だけだ。それにこの辺りに男の子のいる家などない。義一に訊いてみるか。親戚の子供でも呼んだのかもしれない。
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