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夕立はもう終わって外からは虫の鳴き声が聞こえる。そろそろ戻らなければいけない。母も心配するだろう。
「男の子のことが分かってすっきりしました。僕は帰ります」
祐樹はそう言って立ち上がった。部屋を出ると玄関に向かう。スニーカーがびしょ濡れだ。祐樹は加奈子を呼んだ。サンダルでもいいから義一の靴を借りたかった。
「祐樹くんは何センチ?」
「二十五、五です」
「それなら主人と一緒だわ。スニーカーを貸すからそれを履いて帰って」
「サンダルでもいいんですよ」
「それだと山道は危ないわ。洋服と靴は洗っておくから後で取りに来てくれる?」
田舎には二泊三日の予定だからまた来られるだろう。東京土産でも買ってきていればよかったな。母に事情を話してお菓子の詰め合わせでも買ってきてもらうか。祐樹はレンタカーで来ているので祐樹が行ってもいいし。
「すみません。じゃ、また来ます。お邪魔しました」
義一の靴はぴったりだった。祐樹は来た道を引き返した。川は夕立で水の色が茶色く濁って激しい流れになっている。
実家に着いた。やはり母は心配していたようで祐樹の顔を見るなりほっとした様子を見せた。祐樹は剣持の家で服と靴を借りたこと。シャワーを浴びさせてもらったことを話した。
「明日、私が町にお礼の品を買いに行って来るわ。さ、もうすぐ夕飯よ」
夕飯の支度は母だけがして叔母は何もしない。祖母は歳だから仕方がないが叔母は母に甘えてばかりではいけないと思う。いくら息子を亡くして病んでいたって月日はだいぶ経っているのだから。
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