ミコト

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ミコト

「雨よ降れ」 どうか、雨が降ってアリサとユウキの デートが台無しになりますように。 私がこんな最低なことを願うのは 優希のことが好きだからだ。 好きだと気づいた時にはもう遅かった。 優希は私の親友である愛理彩と 付き合っていた。 私にはどうすることもできない。 だから神様に願うのだ。 「それが、君の本当の願い?」 どこからか、声が聞こえた。 周囲を見渡すけど 誰もいない。 「ここだよ」 声のした方を見ると、少年が宙に浮いていた。 「え……」 信じられない状況に呆然とする。 「やっと目が合った。僕はミコト。一応神様だよ」 少年はニッコリ笑う。 ゆ、幽霊? いや、神様って言ってるし神様? 「神様……なの?」 私は呆然としながら言う。 「うん、僕は願いを叶える神様なんだ。 空ちゃんの願い、叶えてあげるよ」 すると、突然雨が降ってきた。 私は慌てて、折りたたみ傘をさす。 ホントの神様なんだ。 そう思っていると神様……ミコトはクスクス笑った。 「そうだよ、ホントの神様」 え? 私、今声に出してないよね? 「神様は人の心が読めるのさ」 えっ、嘘。 「知らなかった」 「ねぇ、ソラちゃん。 君は優希くんのことが好きなんだろう?」 ミコトはニヤリとした。 顔に熱が集まるのを感じた。 そっか、神様だから心を読んで…… 「そ、そうよ。彼女がいたって人を 好きになるのは自由でしょ?」 「別に咎めてるわけじゃないよ。ソラちゃん。 君は二人に別れてほしいと思ってるね?」 ギクっとする。 「そんなことは……」 思わず目を逸らした。 ミコトはクスクス笑う。 「隠さなくても大丈夫だよ。 僕が願いを叶えてあげる」 彼は怪しげに笑った。
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