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「あの、こちら、食事はできますか?」
「はい。うちはモーニングが売りなんですが、他にも色々あるのでご覧ください」
トレイに水とおしぼり、メニューを持って、俺はテーブルに向かった。
雨に濡れた彼は寒くないだろうか。
「エアコン、少し温度上げましょうか。冷えましたよね」
「あ、ありがとう」
ふわりと微笑んだ彼は、メニューを見て、Bセット、お願いしますと言った。ハムとチーズのホットサンドに飲み物はミルクティーだ。
いつもなら、常連さんが次々に入ってくる時間なのに、今日は誰も来ない。開店のプレート、ちゃんと出しておいたよな、と首を傾げた。
きつね色に焼きあがったホットサンドに、さくっと斜めに切れ目を入れる。たっぷりのバターで焼かれた香ばしいパンの香り。
ハムと溶けたチーズがパンの中にじゅわっとしみ込んでいる。紅茶はアッサムで、おかわりの分も小さなポットに用意した。カップとピッチャーが温まっているのを確認して、ミルクを少し加熱する。
「お待たせしました」
「……わ、おいしそう」
ぱっと輝く笑顔は、彼を幼く見せる。すぐに手を伸ばそうとしたのを見て、慌てて止めた。
「ミルクティーもホットサンドも熱いので、気をつけてくださいね」
「は、はい」
「どうぞ、ゆっくりお召し上がりください」
カウンターに引っ込んだ後にそっと見れば、彼は恐る恐るカップに手を伸ばしていた。ふうふう吹きながら紅茶を一口飲み、ぱちばちと瞳を瞬く。砂糖は多めの二杯で、たっぷりとミルクを注ぐ。そして、冷めるのをじっと待っている。
ホットサンドは、端から小さくかじっていく。チーズのところはやっぱり熱かったみたいで、びくっと肩を震わせて、慌てて水を飲んでいた。
なんだか可愛い。小動物みたいだな。
思わず、じっと見つめてしまう。早く食べたいのだろう。ふうふうと一生懸命サンドを冷ましている。その後に用心深く、小さな口でかりっと齧る。もぐもぐ食べると、ぱちぱち瞳を瞬く。
あ、笑った。美味しかったみたいだ。よかった、とこちらまで嬉しくなる。
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