姫子再来

4/7
前へ
/73ページ
次へ
「そーなの! 大我が良い人だってことをアピールして欲しいの! ね、お願い!」 かつての自分を敵視していた姫子さんはどこいった? この人は、いや、このお方は、男でこうも変わるのか?凛子は開いた口が塞がらない。 「でもさ、結婚に関して星願はなんて言ってるんだよ? あの子にはきちんと話してるのか?」 聡は慎重に口を開いた。 そうだ。何よりも子どもが大切なはず。 「んー、まだ会わせてないの。どっちにしろ高校は寮生活の所って思ってるからさ」 いただきまーす、と姫子は珈琲に口をつける。 「寮生活って……金がかかるんじゃないのか? 姉さんが出すのか?」 「んー、おかーさんが少し助けてくれるかな。ほら、貯蓄してくれてるじゃない。星願の名義で!」 「あれはあの子が必要な時にって事だろ?」 「いま必要なのよ」 「そうじゃない! 高校は親が出せよ! 母さんが貯蓄してるのは星願の将来の為だ」 「今だろうが後だろうが変わんないじゃん」 ダメだこりゃ。凛子は聡と姫子のやり取りから察した。きっと姫子さんは、バンドのファンとして今のお付き合いに至ったんだろう。という事は、貢いでいるに違いない。いわゆるカモだ。カモ……いや、昨今は、推しへのお布施というのか。 「兄さん、俺からもお願いしやす! 姫子の事たいせつにしたいんで!」 つんつんの先っぽをこちらに見せる形で頭を下げる大我。 「やだー、もー、じゃー、私からもおねがいします!」 二人して頭を下げた。姫子の頭のてっぺんを見たのは初めてだ。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加