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「そーなの! 大我が良い人だってことをアピールして欲しいの! ね、お願い!」
かつての自分を敵視していた姫子さんはどこいった? この人は、いや、このお方は、男でこうも変わるのか?凛子は開いた口が塞がらない。
「でもさ、結婚に関して星願はなんて言ってるんだよ? あの子にはきちんと話してるのか?」
聡は慎重に口を開いた。
そうだ。何よりも子どもが大切なはず。
「んー、まだ会わせてないの。どっちにしろ高校は寮生活の所って思ってるからさ」
いただきまーす、と姫子は珈琲に口をつける。
「寮生活って……金がかかるんじゃないのか? 姉さんが出すのか?」
「んー、おかーさんが少し助けてくれるかな。ほら、貯蓄してくれてるじゃない。星願の名義で!」
「あれはあの子が必要な時にって事だろ?」
「いま必要なのよ」
「そうじゃない! 高校は親が出せよ! 母さんが貯蓄してるのは星願の将来の為だ」
「今だろうが後だろうが変わんないじゃん」
ダメだこりゃ。凛子は聡と姫子のやり取りから察した。きっと姫子さんは、バンドのファンとして今のお付き合いに至ったんだろう。という事は、貢いでいるに違いない。いわゆるカモだ。カモ……いや、昨今は、推しへのお布施というのか。
「兄さん、俺からもお願いしやす! 姫子の事たいせつにしたいんで!」
つんつんの先っぽをこちらに見せる形で頭を下げる大我。
「やだー、もー、じゃー、私からもおねがいします!」
二人して頭を下げた。姫子の頭のてっぺんを見たのは初めてだ。
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