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「そうじゃない。あの子は姉さんの過去で精神的に早く大人になりすぎなんだよ。少しは母親らしくしてやってくれ。昨日はご飯作ったのか?」
「え?」
目が泳ぐ姫子。
「毎日きちんとあの子を食べさせてるのか? って聞いてるんだ」
聡にしてはほんとに珍しく怖いくらいに真剣だった。
「食べさせてるよー? 昨日は……私のご贔屓の店から買ったものだったけど」
姫子は唇をとがらせる。
「昨日は、どこの、何を、食べた? 夕飯」
逃がさない聡。
「……コ、コンビニ……」
「姉さん。頼むからちゃんとしてくれ」
凛子は無言で洋菓子を差し出した。
これはママ友達からもらった東条石井のお菓子だ。今の会話を聞いてしまった。なんとなく、このお菓子が勿体ない気がするじゃないか。姫子さんめ。
「あのー、俺、一度星願ちゃんに会ってみます」
大我が見た目より陽気な声で言った。
「あ、そうね! そうだわ! 一度会ってみてよ! きっと話も前向きに進むと思うから」
パチンと手を合わせて姫子は喜びの声をあげた。
自分の子供に合わせるということがどういう事か分かっているのだろうか? この人は?
「姫子さん、そこは慎重にした方がいいと思うわ。余計なお世話かもしれないけれど……」
凛子はたまらない気持ちになった。星願ちゃんには数回しか会ったことがないけれど、大人しそうな子だった。母親がこんなパンク野郎と再婚すると聞いたらなんて思うだろうか?
「凛子さんて、いつも邪魔するのね」
「え?」
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