プロローグ

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聡は7時過ぎに帰宅した。 幸人の英会話教室が終わって、晩御飯の準備が出来た丁度いいタイミング。 「あー、腹減った」 「あなた お疲れ様」 「んー、なんかいい匂いがするな」 「今日は魚がいいのがあってね、フライにしてみたの」 「おー、うまそう! 白身魚か。タルタルソースある?」 「たるたるー、パパ、太るよ?」 幸人の素早いツッコミに笑いながら、聡はビールを冷蔵庫から出した。 「さて、食べようか」 凛子も一杯だけいただく。 「幸人、学校どうだった?」 「んー、楽しかったよ」 「そうかー、お勉強はどうだ? ついていけてるか?」 何の変哲もない日常会話。これがどれ程幸せなものかを凛子はいま、噛み締めている。 幸人は男の子らしく快活に育っていた。学校でもお友達も多く、それを通じてのママ友も増えた。 「パパはね、幸人と一緒にご飯が食べられてとっても嬉しいんだよ」 「うん! 僕も!」 パパ、という言い方も直さないといけないなと感じるこの頃。 「幸人の今度の参観日はパパもいくからな」 「やったあ!」 「パパが行っても恥ずかしくないの? 幸人は」 「うん! だってまあ君ところもパパが来るって言ってたから」 そっか。お友達の名前を聞くと安心する。良かった。 凛子は、愛情をかけられる今のこの家庭環境にとても感謝している――。
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