バカップルに パイナップル

1/4
前へ
/73ページ
次へ

バカップルに パイナップル

ところ変わって――夜八時。 姫子はピンクのミニスカートにハイヒールで走っていた。よくぞそれで転ばないなと思うほど高いヒールで。 少し雨が降ってきた。せっかくゆるふわパーマにした髪の毛が崩れてしまう! そう思う姫子は、更にスピードに拍車をかけて走る。彼女が向かう先は駅だった。 着いたところで早速スマホをいじる。 「あ、もしもし? 星願(きらり)? 今日もコンビニのご飯買っといたから食べといてね。うん……うん、仕方ないでしょー? ママ忙しいんだからっ」 そう会話をして、途端に不機嫌な顔になる姫子。 「あー、早く大我(たいが)来ないかなー」 娘ももう赤ちゃんじゃないのだから自分の事は自分でして欲しい。昔から何一つ変わってない。家を一晩あけただけで母の淑子に告げ口された時にはヤバいほど腹が立ったものだ。 「おい、姫子待たせたな! 」 そこに1人の男性が現れた。 黒いジャケットとパンツ。ジャラジャラとシルバーのチェーンを腰につけている。 髪の毛はツンツン頭の緑色。手にはギターケースがあった。 「待ってないよー。今来たとこ」 「まじ?」 「うん! ね、今日のバンドどうだった!? いっぱいお客さん来た?」 「んー、まあまあかな。竜二がシャウトしまくってさー、腹減ったわー」 「じゃ、私のおごりだねっ! 何食べる?」 「肉食いてぇ」 二人は手をからませて恋人繋ぎをした。そして夜の歓楽街へと消えてゆくのだった。 彼の名前は、井流(いりゅう) 大我―― バンド【クリティカルデーモン】のギタリストである。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加