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「で、私たちの結婚式はいつにするの?」
姫子は牛タンにネギをのっけながらきいた。
「ん? いつでもいいし。なんなら今日出すか? 婚姻届?」
大我はあっさりと言った。
「だーめ! こういうのはきちんとしないとダメなのっ! みんなに見てもらえる日なんだから!」
「んー、まあ、女が喜ぶ日だからな。でもよぉ、幾らくらいかかるんだ? カネ」
「んー、そんなになくていいよぉ? 300くらいかけたらいいんじゃない?」
「おい、俺は貯金ないぞ?」
大我の声が低くなった。
「だーいじょうぶっ! 大我の事は売れるまで私が支えるって決めてんだからっ! うちのおかーさんが私や娘の為に貯めてくれてるお金があるからさ!」
「それ、いけんのか?」
「うん!!」
姫子は満面の笑みだ。
聡の時を思い出す。
盛大な挙式はしなかった。凛子さんの親戚と最低限の友人くらいしか呼ばなかった。でも、私は違う。みんなを呼ぶんだ。
「派手にいきたいよね」
「そか? それもいいかもなあ。バンドメンバーも全員呼んで、マッドクイーンズのやつらとセッションすっか?」
「それいいね!!!」
その時、姫子は壁に貼られているメニューに目が止まったのだった。
「あ、ねぇ、私、フルーツ食べたい」
「ここ、パイナップルが甘くて美味いらしいべ?」
「べ、って言うのやめてよぉ。田舎丸出しじゃん!」
「仕方ないだろ? 田舎から出てきてんだからよ。青森バカにすんなや」
「うふん。別にバカにしてないけどさ。すみませーん! パイナップルくださーい」
きっと聡や凛子さんの時よりも盛大になるに違いない。
そこで娘に感動的な手紙を読ませて最高に盛り上げるんだ! おかーさんも喜んでくれるに違いない!
テカテカと黄金色に光ったパイナップルは美しくカットされて出てきた。宝石みたいだ。それを姫子は満足気に頬張ったのだった。
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