119人が本棚に入れています
本棚に追加
姫子再来
凛子は朝早くに起きて幸人と聡の為の朝食を作っていた。本日は和食。だし巻き玉子と旬の野菜の入ったお味噌。そこに浅漬けのキュウリを出して、冷蔵庫から納豆も出す。
「おはよぉ、ママ」
「おはよ。幸人。今日はいい天気になりそうよ」
幸人は目を眠たそうに擦りながら起きてきた。一人で出来ることが増えてきてとても頼もしく感じる。
「今日、姫ちゃんが来る日? だよね?」
姫ちゃん。
その呼び方はやめて欲しい。でもそう呼ばないと姫子は目ん玉をひんむくのだ。
「そうよ。でもすぐに帰ってくれるから。午後になったらお外で遊ぶ?」
「うん! パパが無理だったら隼人君と遊ぶからママがスマホできいてみて」
「わかった」
今日はきっと大丈夫。聡は午後も予定がないはずだから公園にでも行って、ボールで遊べるだろう。
「おはよー」
「パパおはよ」
「さあ、顔洗ってきて。お味噌汁いれるよ?」
「はーい」
あれから聡に姫子さんは今何をしているのか、と訊いても何も分からなかった。彼もあまり姫子さんとは連絡をとっていないらしい。
けれども彼いわく、急にかかってくる連絡は今までろくなモノがなかったらしく、良い思い出がない。そう言って顔を歪めていた。
姫子さん、あの電話はかなり声がルンルンだったけれど……まさかとは思うけど……。娘さんもいる事だし軽率なことがなければ良いのだけれど。
「美味そー」
「ママ、食べよう」
「そうね」
三人で仲良く「いただきまーす」と言うと、それだけでやはり心からの充足感を噛み締める。
ああ、本当に私は今、幸せだ。
最初のコメントを投稿しよう!