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秘め事
青森は、とても湿度が高かった。空が青いけれども、このムッとした気候に身体がしんどいと訴えてくる。
「姫子ー! こっちだべー!」
大我が呼んでいる。
でも、身体が動かない。しんどいし。
「姫子っ! かなぽねやみでこまったもんじゃ」
「もー! やだー! しんどいし! こんなに草刈りがあるなんて知らなかったああ!」
本当は嫁ぐ気なんてなかったのにぃ!
「おめ、リンゴなめとったらダメだ! 青森なめんなよ!」
ギャーギャー言う姫子の襟首を掴んで、大我は農地の隅へと移動させる。
「ほら、頑張ろう。姫子。叔父さんが懸命にやってくれてた土地だ。細かいところを草刈機でやってけれたら後は俺らがやっからさ」
「ええー、もぉー!」
こんな話、聞いてない。
リンゴ育てるのがこんなに大変だなんて、聞いてないし。しかも、バンドを辞めた大我なんでちょっと魅力半減じゃないかっ!
……言えないけれど。
姫子は、青森二日目にして、面と向かって「役立たず」と大我の叔父である弘樹さんに言われたのだった。
親が亡くなってるから楽勝とか思ってたけど、まさか口うるさい叔父さんがいるだなんて。しかも姪っ子とか、マジでウザイ!!
「ほら、しっかりやるべよ」
「いやあああ」
こんな暑い長袖着て、リンゴばっかりの広い土地……どこを見てもリンゴの樹ばかりっ! すでに故郷が恋しくなってきた。
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