110人が本棚に入れています
本棚に追加
自分はずっと、他所に目を向けてあの子を見ないようにしていたけれど、それは決して本意じゃなかった。今更だけど。
ずっと、人を信じて愛して裏切られるのが怖かった。こんな事、誰にも言った事はない。
だって、言ったって救われないもん。
でも……
ここで、大我に頼りながら頑張ったら、……ちょっとは強くなれるかな?
私でも、なれるかな?
「星願……」
しくしくと泣く姫子に対して、大我は連休になったら一度娘の顔を見に行こうと言ってくれた。
「だから、頑張るんだべな」
「うん……」
袋を剥いだリンゴが太陽の光を浴びて光っている。姫子はしばらく寄りかかったままでその風景に見とれていた。
私、今よりも強くなろう。
何もかも、今更だけど。
姫子は、
星願の笑った顔を思い出しては、泣いた。
とめどなく溢れる涙は、一番この世で光り輝く太陽に弾かれた。
[完]
最初のコメントを投稿しよう!