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朝食後、凛子はひらりとしたスカートにシンプルなシャツ姿で掃除をサッと済ませる。玄関からリビング、廊下、飾ってあるものなど、とにかく目に届く全てのものを拭き掃除した。
あの姫子のことだ。きっと何かと難癖つけてくるに違いない。もうひとり来るって言ってたけれど……まさか、お義母さんとか? いや、違う。あの人ならば直に連絡をしてくるだろう。
「誰なのかしら……」
凛子が独りごちた時、チャイムが鳴った。
来た! 姫子さんだわ!
すかさず自室から出てきた幸人と争うようにして玄関の扉をあけ、そこに緑色の物体が視界に入る。
「うわあっ!」
幸人が仰天の声を上げた。
「ちゃーす」
「凛子さーん、おひさしぶりー」
グリーンの髪の毛だ。しかもつんつんに立たせて黒の革ジャンに細身のパンツ、腰にチェーンまでつけて……この人は、誰?
「あ、姉さん久しぶりだな……って、誰だよ」
後から追いついた聡も更に驚きの声を出す。
「俺、バンドやってる井流 大我って言います。よろしくです」
「彼氏だぴょん! はい、これ。凛子さん」
ピンクのミニスカート姿の姫子は【にくまん】と書かれた紙袋を遠慮なく差し出した。
「あ、ありがとう。姫子さん……」
「あがるよー?」
「ど、どうぞ」
ニコニコと二人は当たり前のように凛子たちの家へと入る。
「ね、ママ、あの人どうして髪の毛あんなんなの? みどりだよ?」
幸人は不思議そうに尋ねた。
「しっ! 幸人はお部屋にいってなさい」
「……んー、はぁい」
残念がる幸人を無理やり部屋へと追いやると、凛子は早速 珈琲を入れ始める。
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