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『浮気チェックリスト』
1,スマホを肌身離さず持つようになった
「トイレに立った時もポケットに入れている。一度、そのままトイレに落として涙目になっていたのが可愛かった」
2,電話やメールにその場で出ない
「通知があっても『大丈夫だから』と閉じて、ポケットに入れている。電源をつけ忘れて、教授からの連絡に出られず、こっぴどく怒られていたのが、微笑ましかった」
3,付き合いが多くなった
「友人との旅行やお出かけが多い。お土産をよく買ってきてくれる。美味しい」
4,イベントや女性向けのトレンドに詳しくなる
「某遊園地のイベントに詳しく、デートではスマートに案内してくれた。メイクのトレンドも知っているのか、最近褒めてくる」
5,身だしなみに気を遣い始めた
「地味な服装ばかりだったのに、いつの間にかおしゃれ男子に変身していた。心なし、肌も綺麗になっている。つまり、かっこいい」
「……浮気されてるかも」
「誰が?」
ソファに寝転んでいる頭上から声がかかった。母が心配そうに覗き込んできた。おっとりとして、元々眉下がりなのに、更に眉が下げられている。
「もしかして加奈のこと?どうしましょう。お父さん、加奈が浮気されてるって」
「何っ。なんて大変……可哀想なんだ。加奈は今どこに。慰めないと取り返しがつかなくい」
「大丈夫よ。加奈なら今から家に来るわ。彼氏を連れて、あっ」
両親が見開いた目を合わせた。
「浮気彼氏を連れてくるなんて……」
「もしかして騙されてるんじゃないか」
「そうね、どうしましょう。警察に相談した方がいいかしら」
「ちっがーーう」
私は大きな声をあげて、ソファから飛び上がった。
「浮気されてるのは私。加奈じゃないから」
「……あら」
動転していた両親から焦りや気が抜ける。2人の顔に笑みが浮かんだ。
「由奈らしいわ。なら良かったわね」
「そうだな」
ふふふ、はははと笑い合う彼女たちにとって、私の浮気問題は興味がないようだった。いつものことなので、私もため息をついて、気を落ち着かせた。
『お姉ちゃんだから』と言い続けられ、両親共におっとりしている分、しっかりとした自分になろうと努力した結果、妹である加奈は可愛がられ、私はおざなりに扱われるようになっていた。
「やっと一番に愛してもらえると思ったのに」
『僕の前では気を抜いていいよ』と言ってくれた彼氏の浮気疑惑に胸が痛む。細かい記念日まで覚えてくれ、些細な連絡にも優しく応答してくれていたことを思い出し、視界が涙で霞んだ。
妹の彼氏に会うどころではない。いいえ、ダメ!私は勢いよく首を振って自分を奮い立たせた。
両親もだけど、加奈も結構天然だ。変な男に引っかかってるかもしれない。私がしっかりしなければ、性根まで見極めなければ。
「そうよ。この家を守るのは私よ」
ピンポーン
「私が出る!」
甲高いチャイムが鳴り、足を踏み出した。鍵を開け、玄関に明るい光が入り込む。
「いらっしゃ……旭くん?」
妹の隣に並んでいたのは私の彼氏だった。
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