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保健教師と校外で会うのは5回目を超えた。
全国チェーンのファミレスで、私は保健教師と遅めのランチを食べていた。
私は一番安いドリア。保健教師はそこそこ高いランチメニューを選んだ。
「あなたは本当にドリアが好きね」
猫舌でなかなかスプーンが進んでいない私に、デザートのパンケーキを頬張りながらモゴモゴと話す保健教師。
ドリアは嫌いではないけれど、毎回先の分も奢らないといけないので、少しでも節約したかった。
何度も違和感を覚えたが、今、私が頼れる大人は保健教師しかいなかった。
「そういえば先生ね、最近家を買ったの。近くに来たら寄ってってね」
保健教師はいつものように自分の話を始める。
今日はちゃんと私の話を聞いてほしいな……。
「そうなんだ。どの辺?」
私は興味がある振りをして保健教師に訊ねる。
「K市内。最寄り駅もO駅だから学校からもかなり近いの。
節約のために車通勤するけど、これから頑張って働かなくちゃ。
あなたの家みたいに最初からローン無しだったらよかったんだけど」
「新築の家の香りっていいよね。なんかワクワクするし」
「……そうね」
保健教師は黙り込んだ。
どうしたんだろう……、私、別に変なこと言ってないよね。
しばらくの沈黙が流れる内に、私はドリアを食べ終わっていた。
そして今度は私から話題を振った。
保健教師はパンケーキを食べ終わった後、ケータイをしきりに気にしているようで、私の話に適当に相槌を打っているようにしか見えなかった。
「先生、聞いてる?」
流石に少しイラついた私の言葉にパチンとケータイを閉じた保健教師は、真剣な顔をして私に語りかけてきた。
「あのね。お母さんね病気のことなんだけど。治せる機械があるの。この後そこに行ってみない?」
「機械ってなに?病院の機械とか?」
「なかなか予約が取れないんだけどね。今、空きができたって担当者から連絡が来たの」
私は藁にでもすがりたいくらい追い詰められていた。
行かないで諦めるより、自分の目で確認してから判断しようと思った。
「分かった。行く」
その言葉を聞いた保健教師は機嫌がよくなり、ケータイでメールを打ち始めた。
打つのがすごく遅いな……。
あ、これ簡単ケータイなんだ。
「じゃあ早速行こうか」
表通りから少し奥に入った路地に、古びたビルが建っていた。
どうみても病院には見えない。
「お母さん、治したいんてしょ」
私が尻込みしているのを感じ取ったのか、保健教師がそう言った。
保健教師に続いてビルの中に入り、階段を上っていく。
4階に着き、保健教師が一番奥の部屋の扉を開けた。
外から見たビルの雰囲気とは正反対に、綺麗で洒落た内装の部屋がそこにあった。
大きな鏡に洗面台、そして今まで見たことのないような機械がたくさん並んでいる。
美容院…‥?
いや違う、ここはきっとエステサロンだ。
「あら、もう着いたの?」
店員らしき40代くらいの女性が私達の前に現れ、保健教師に親しげに話し掛けてきた。
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