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三面鏡のような大きな美顔器から伸びるコードのヘッド部分を顔に当てられる。
「これが内側の角質をね……」
店員の説明も聞き流しながら、鏡に映るされるがままの自分に脱力していた。
「分かりやすいように顔の半分だけ試してみてあげてよ」
「そうね、その方が効果が分かりやすいわね」
+
「わあ、すごい!ツルツルになったねー!」
席を外していた保健教師が戻ってくるや否や、高いテンションで大袈裟に誉める。
目を凝らして鏡を見ても、施術を受けた右半分の顔と、受けていない左半分とでは全く差はなかった。
しかし保健教師と店員は「本当、全然違う!」と繰り返す。
それよりなんで2人とも見えない振りしてるの?
きっと私の肌が弱いせいだね。
右の頬に1センチくらいの大きなシミができちゃったじゃない。
「ねえ。この美顔器を使って肌が綺麗になったら、お母さんも自信が付いて病気も治るんじゃない?アルバイト頑張ってるもんね。分割で払えるでしょ?」
信じていたのに。
本気で相談に乗ってくれていたわけじゃなかったんだね、先生。
必死に次の予約を取ろうとする店員と保健教師を残して、私はビルを後にした。
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