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壱
青嵐が従者を連れて南に来訪して来たのは正午過ぎだった。
「随分と豪華な···」
西洋紛いな煌びやかな馬車に乗ってきたものだと出迎えた雅鷹が感心する。
「姫君の数々の功績により父上であらせられる闇神様からの贈り物として頂いた馬車でございます」
御説明ありがとうございます。と、雅鷹が青嵐の侍女であろう女性に苦笑いで礼を言えばツンっとした表情で顔を背けられた。
絶対この侍女性格悪いと雅鷹の口が引つる。
大広間に案内された青嵐はララが来ると
「南を統治されております時の蕃神様に拝謁致します」
と、頭を下げる。
「表を上げていい。俺が蕃神だ」
あえて顔を隠さずに素顔のままで青嵐と対面する。
「北の君主、闇神の第五姫・青嵐でございます」
鮮やかな空色の柔らかそうな髪の毛にそれに合わせたかのような青石色のタレ目が印象的だ。
「やっぱ闇の娘だけあって美人さんだな」
「お褒めに預かり光栄ですわ」
「末っ子ちゃんだっけ?彼奴も元々末っ子だったから気が合うんじゃね?」
「そうだったんですの?父は自分の事を話されないからまさかここで知るなんて驚きましたわ」
会って早々和気あいあいと話すララと青嵐に「早く本題に入れよ」と、雅鷹が白い目で見てくる。
「いやぁ~···青嵐ちゃんまじで可愛いわぁ
嫁にこない?」
「あんた北の姫君に何言ってますのん!?」
戦寸前の両国がバチバチな時に求婚するなと誰しもが思うだろう。
青嵐の後ろにいる侍女達が怪訝な顔をするのもうなずける。
「····ふふっ」
そんな中で青嵐はクスクスと袖で口元を隠して笑う。
「蕃神様ってば面白い方ですわね」
普段は仮面で顔を隠している為、どんな人物なのかと緊張していたが、思いのほか気さくな人物で良かったと青嵐が言う。
「闇から悪口でも聞かされてると思ってたわ」
「父は四神の話をしてくれませんの」
「いつか自分が跡を継ぐかもしれないのに」と、青嵐が愚痴を零した。
己が北を継ぐと言うのは【兄弟殺し】をしていたと言われる青嵐の野心が垣間見える言葉だった。
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