第7話 目覚めさせられて

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第7話 目覚めさせられて

 家の中に入ると、莉緒とエリちゃんはすぐに2階へ上がろうとした。 「莉緒ちゃんたちは、うちにお泊まりするからエリのパジャマを貸してあげなさい」 「えっ」  突然なにを言い出すんだろうと思ってナオミさんの顔を見た。 「ご主人はまだ帰ってこないんでしょ。何があったのかゆっくり聞いてあげる」  ナオミさんが耳元で囁いた。 「でも……」  ショックが大きすぎたため思わずついてきてしまったが、この間のこともある。少し警戒してしまう。 「今日はエリちゃん家でお泊まりするの?」  弾んだ莉緒の声が聞こえてきた。  莉緒は一人っ子。  家に帰ってからは、いつも一人で本を読んだりゲームをしたりしている。  きょうだいがいる近所の子が、仲良く遊んでいるのを羨ましそうに見ていたことがあった。  家に帰っても一緒に遊べるきょうだいが欲しいのかもしれない。  それに莉緒は友だちの家にまだお泊りをしたことはない。 「お泊りしたい?」 「……うん……」  まるで私の機嫌を伺うかのように上目遣いで莉緒が見てくる。  その表情があまりにも可愛いかったので私は微笑んだ。 「じゃあ、そうしようか」  家に帰ってもどうせ夫と麻衣さんのことで、ろくでもない想像しかしないだろう。  それなら、誰か一緒にいてくれたほうがいい。  それにナオミさんのこの間のことはきっと私を揶揄っただけに違いない。 「着替えを取りに帰ろう」  泊まる予定などなかったので着替えは当然持っていない。  莉緒の手を取ろうとした。 「わざわざ帰らなくてもいいよ。エリの使っていないものがあるからそれを着たらいいし」 「そんな……」 「もちろん、お金はちゃんともらうよ」  そこまで言われると断りにくい。 「じゃあ、私の分だけでも取りに帰ってきます」  莉緒の分はいいとしても、私の分は取りに帰らないといけない。 「いいわ。私のを貸してあげる。もちろん、全部新品」 「さすがにそこまでは」 「いいじゃないの。取りに帰ってたら、遅くなるし。買い取ってくれたらいいから」 「そうですけど。サイズが違いますし」  私とナオミさんでは体型が違う。ナオミさんは長身のスレンダーボディー。  私は140センチほどの身長で痩せっぽちだが、胸だけはナオミさんよりも大きい。 「大丈夫。いろいろなのを取り揃えてあるから。沙也加さんに合うものもあると思う」  どういう意味だろう。  いろいろなサイズのものがあるということだろうか。  でも、どうして……。  疑問は浮かんだが、ナオミさんに押し切られる形でそのまま泊まることになった。  エリちゃんと莉緒はご飯のときもきょうだいのようにはしゃぎ、お風呂も一緒に入った。  エリちゃんも莉緒と同じ一人っ子。  家の中に同じ歳の子がいるのは嬉しいようだ。  私はナオミさんの手伝いをして、夕ご飯を作ったり、片付けをしたりした。  二人が二階の子ども部屋に上がっていくと、私はナオミさんに促されてお風呂に入った。  お風呂に入っている間、夫と麻衣さんのことがずっと頭に浮かぶ。  夫と麻衣さんはどこで出会ったのだろう。  夫と一緒に買い物をしていたとき麻衣さんと会ったことはあるが、それがきっかけで付き合い出したとは考えにくい。  私に内緒で何度ぐらい浮気していたのだろう。  夫はときどき友だちと飲みに行くと言って帰ってくるのが遅いときがあった。  そのときに麻衣さんと会っていたのだろうか。  まだ二人はベッドの中で抱き合っているのだろうか。それとも一緒にシャワーを浴びて、これからまたベッドインでもするんだろうか。  次々と妄想が膨らんでいき、夫に裏切られたという現実がまた思い出され涙が出てくる。  なんとか涙を抑えてお風呂から上がると、脱衣所には籠が置いてあった。  中には、ナオミさんが用意してくれた下着とベビードールが入っている。  ブラもショーツも真っ黒で派手な花模様がついたメッシュのもの。いわゆるセクシーランジェリー。  ベビードールは真っ赤。薄い生地で肌が透けて見える。裾もショーツがやっと隠れているという短さ。  さすがにこれは無理と思った。  でも、昼間の下着はつけたくないし、昼食がホテルだったのでよそ行きのワンピースを着てたのでシワにしたくない。  仕方なく身につけた。  ナオミさんはダイニングに座っていた。  私を見ると、ワインとチーズを冷蔵庫から出してきて、ワイングラスをテーブルに置く。 「あら、似合うじゃない」  ナオミさんは満足そうな笑みを浮かべている。 「恥ずかしいです。もっとほかのはないんですか」  右腕で体を隠し、空いた手でベビードールの裾を引っ張りながら言った。 「ちょっと派手だっだかしら。でも、沙也加さんに似合うのはそれだけだから。座って」  ナオミさんの舐め回すような視線が痛い。  座ったほうがナオミさんの視線から少しでも体が隠れるだろう。  ナオミさんがグラスにワインを注ぐ。今日は白みたいだ。 「このあいだのワインは口に合わなかったみたいだから、今日は貴腐ワインにしたの」 「貴腐ワイン?」  私はワインに詳しくない。 「甘いの。飲んでみて」  ブドウの風味に蜂蜜のような甘さがする。とても飲みやすい。 「美味しい」  これなら飲めそうだ。 「そう。よかった。チーズにも合うの。食べて」 「はい」  遠慮なくいただくことにした。ナオミさんの言うとおりワインとチーズはとても合う。 「それでどうしたの?」  ワインを2、3杯飲んで少し酔いが回ってくると、ナオミさんが聞いてきた。  私は夫と麻衣さんをホテルで見かけたことを話した。浮気だと思うとも言った。 「麻衣さんは美人だもんね」  それは言われなくても分かっている。麻衣さんと私では相手にならない。  でも、夫を信じていたのに。 「でも、それだけが理由かしら」 「どういう意味ですか」 「旦那が浮気したのは麻衣さんが美人だからっていう理由だけかな」 「ほかになにがあるって言うんですか」  私の性格だろうか。  麻衣さんのようにはっきりものは言えないし、物事をテキパキすることもできない。なにをするのも時間がかかってしまう。  そんな私に夫は決して顔には出さないが、雰囲気でイライラしていることは分かる。 「セックス」 「どういうことですか?」 「沙也加はベッドの中ではどんなふうなの」 「どんなふうって……どうしてそんなこと言わないといけないんですか」  そういうのは夫婦だけの秘密だ。いちいち他人に言う気はない。 「声を噛み殺してあえぎ声なんか上げたことないんじゃない」 「そんなこと関係ないでしょ」  どうしてそんなことを聞かれないといけないのか。  私はだんだん腹が立ってきた。 「男は女のあえぎ声や体をくねらせる姿や啜り泣く声に異常に興奮するものなのよ」 「……」  ナオミさんの言うことは本当だろうか。たしかに私はそんなことをしたことがない。  夫の前でそんな声を出したりするのが恥ずかしくて必死に我慢していた。 「どうしてる?」 「そんなこと言う必要ありません」  私は立ち上がった。 「じゃあ、確かめてあげる」  ナオミさんは逃げようとする私を抱きしめる。 「ダメです」  ナオミさんの腕の中で、もがいたが振りほどけない。かえって、強く抱きしめられてしまう。 「そんなことを言って本当は期待してたんでしょう」  片手で腰を抱きながら、もう片方の指で顎を摘んで私の顔を仰向かせた。  顔が近づいてきて、唇が引っ付く。舌で唇を割って侵入させようとしてきた。  私は舌の侵入を防ごうと前歯をしっかり食いしばる。  ナオミさんの指が胸の蕾を潰さんばかりに力を入れて摘んだ。 「ぐうー」  あまりの痛さに呻いた瞬間、舌がヌルっと侵入してきた。  慌てて舌を奥に隠したが、あっさりと絡め取られる。  先日と同じ巧みな舌づかいで私の舌はドロドロに溶けたようになっていく。  いつのまにかナオミさんの手が胸を揉みしだいている。  体が熱くなってくる。  これはさっき飲んだワインに酔っているからだと思おうとした。 「うっ、うっ」  ナオミさんの手は私が一番感じやすいところを知っている。  巧みな愛撫に舌だけでなく体も蕩かされそうだ。 「この前の続きをしましょう。今日は逃さないわよ」  私の舌をしゃぶりつくしてから唇を離して、ナオミさんが妖艶な笑みを浮かべた。 「あっ、イヤです。許して」  またあんなことをされたら、私は耐えられなくなってしまう予感がする。 「旦那が浮気した理由を知りたいんでしょう」  短いベビードールの裾を捲り上げて、ナオミさんの手が性器に触れる。 「もういいです。知りたくありません」  腰を振ってナオミさんの手を振り払おうとした。だが、抵抗空しく足の間にあるふだんは皮に覆われている小さな粒を摘まれる。 「もうかわいい頭が出てきてるじゃない。いやらしい」 「ひいー、そこはいや」  私は頭を必死に振ってナオミさんのいたぶりに耐えようとした。  ナオミさんの指は触れるか触れないかというところで小さな粒を愛撫する。  ベビードールを脱がされ、もともと布がないようなブラジャーを剥ぎ取られた。  むき出しになった乳房を唇で啄ばまれ、膨らみ始めた豆粒を舌で舐めしゃぶられる。  気持ちのよさが体中を駆けめぐる。 「うーん」  私は唇を噛んで上げそうになる恥ずかしい声を押し殺す。 「きっと中はすごいことになっているわね。これも邪魔」  ほんのわずかに下半身を覆っていたショーツも剥ぎ取られ私は素裸にされた。 「恥ずかしい」  私は泣き声をあげる。  ナオミさんの指が私の中に入ってきて縦横無尽に動き回る。 「はあー、もうこれ以上されたら我慢できなくなる。やめて」  体の快感に崩れ堕ちる寸前の私は女の声をあげる。 「うるさい口ね。黙りなさい」  口を唇で塞がれた。  ナオミさんが与えてくる快感に酔ってしまい、注ぎ込まれてくる唾液をも飲んでしまう。  ナオミさんは、私を燃え上がらせるだけ燃え上がらせといて、燃えつきる寸前で愛撫をやめる。  それを何回も繰り返す。 「もうどうしてそんな意地悪ばっかりするの」  私は焦らされて完全に頭の血が上ってしまった。 「続きは寝室でしてあげる。防音してあるから大きな声をいくら出しても大丈夫だよ」  ナオミさんはスレンダーのわりに力があるらしく私をお姫様抱っこをして階段を登って行く。  私は反抗する気力もなくされるがままになる。  寝室に入ると、ベッドに寝かされ体中をナオミさんの唇と舌と指で嬲り尽くされた。  何度絶息しても許してくれない。 「みっともないわね。まるで盛りのついた雌犬みたい」  ナオミさんは蔑んだように言う。 「もうおかしくなる。またまたあー」  体中から体液を噴き出して数えられないほど上りつめた。  ナオミさんは私が精も魂も尽き果てて伸びてしまうまで責め続けた。  目が覚めたとき、ナオミさんはいなかった。  体を起こそうとするが、鉛のように重くて動けない。  しばらく微睡んでいるとナオミさんが部屋に入ってきた。 「もう朝よ。どうやら満足したみたいね」 「莉緒は?」 「大丈夫。エリと遊んでる。それにしても昨日はすごかったわ。よっぽど溜まってたのね」  ナオミさんの顔が半笑いになる。 「言わないで」  昨日の自分の痴態を思い出し、恥ずかしさですすり泣いた。 「なにも泣くことないじゃない。女にも性欲はあるのよ。恋とか愛とか心とか関係ない。ただ、気持ちよくなりたいという肉欲だけ」 「そんなことありません。心を許さないと女は感じないんです」  男は心と関係なく肉体への性的刺激だけで快感を得ることができるが、女は心を許した相手としたときしか快感を得ることができないと本に書いてあった。 「よく言うわね。わたしにか可愛がられてこんなにシーツがグショグショになるまで悦んだくせに」 「それは……」  しとどに濡れたシーツを前に私はなにも言うことができなかった。  自分は淫乱なのだろうかと思ってしまう。 「そんなのは男の都合のいい論理よ。一つは自分の浮気を正当化したいから。もう一つは女にも肉欲があることを認めたら、女は馬鹿だから見境もなく足を開いて誰の子を妊娠するか分からないと思っているからそんなことを言い出したのよ」 「まさか」  女の学者の中にも女には肉欲はないという人はいる。 「本当よ。それを清いことだと勘違いした一部のフェミニストや女の心理学者が口車に乗って言っているだけ」  本当にそうだろうか。私には分からない。  ただ、頭はボーっとして体は重いが、溜まっていたものを吐き出した気持ちよさがあるということだけ。 「だから、旦那が浮気をするんだったら、沙也加もすればいいのよ。もし、妊娠が怖ければ私がまた相手をしてあげる」  ナオミさんは妖しい微笑みを浮かべた。  夫は月に一度ぐらいの割合で出張に行く。  麻衣さんと会って浮気をしているかもしれない。  でも、もう気にならない。  夫が性欲を外で満たしているなら、私も外で満足すればいい。  性欲が満たされないときはナオミさんに抱いてもらっている。  今はナオミさんだけだが、近いうちに裕子にも抱かれたいと思っている。  裕子とは学生時代にキスをした仲なのだから。  まだ今はそこまで考えていないが、いつかは女ばかりではなく男にも抱かれたいと思っている。  今の時代は男女平等。  男だけでなく女も性を楽しんでいいんだから。  
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