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僕と同じ気持ちを抱えていたとしたら完全に相談する相手を間違えている。焦っていたら、保人さんは慌てて否定した。
「ごめんごめん、そういう意味じゃないよ。あくまでシェアハウス仲間としての、あれだ、俯瞰している立場からの評価ってやつだから安心して」
しっかり否定してくれたから安心した。
「すみません。僕今までこういう話誰かとしたこと無かったから。でも一緒に住んでるのにこういう気持ち持たれちゃうと迷惑ですよね」
今まで恋愛経験皆無と言っていいような状態だったのだ。実のところこれが本当に恋愛につながるような気持ちなのかの自信も持てずにいる。それらの想いもぶつけてみると、保人さんはしばらく腕を組んで考えてからゆっくりと口を開いた。
「まあ、僕もそんなに経験豊富って訳じゃないんだけど、一緒に住んでて気持ち押し殺すの辛いんだったら思いきって気持ち打ち明けるのもありだと思うけど。上手く行けば毎日がもっと楽しくなるだろうし、駄目だとしても一緒に生活し辛くなるくらい雰囲気悪くする人でもないとは思うんだよね」
初めての恋愛相談だったけど、保人さんは下手に茶化したり面白おかしく話を広げたりすることもなく、淡々と自分の意見を伝えてくれることに安心した。だけど告白ってどうやればいいんだろう……
そんな話をしているときだった。廊下の方からカタンと音が聞こえた。音のした方に目を向けると、足音が遠ざかっていくような音が聞こえてきた。
僕と保人さんは思わず顔を見合わせる。
「……聞かれた……んですかね」
「たぶん誰かに聞かれた……よね」
足音の相手が愛那さんじゃなければいいけど。でも今となっては確かめるすべもなく、恋愛相談もそのまま打ち切りとなった。
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