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 神楽は立ち上がる。神楽はきっと警察に行く気だ。本当は私だってそう望んでいる。このままでいいはずがない。そのために今日ここに来た。  でも怖かった。  神楽英子さんを殺したのは会長の九条文恵であることを明らかにすることは同時に、当時の事件をまた警察が調べ直すことになる。動機はそう、小野田崇人が亡くなったことに起因するからだ。だとすると、それは神楽の罪をも、暴くことになるかもしれない。私は子供みたいに立ち上がった神楽の袖を引っ張る。  怖くて仕方がない。声を震わす。 「でも、当時はまだ幼い子供だったんだよね? 罪にはならないんだよね……? だって神楽は……神楽はまだ小学生で……神楽のしたことは」  言いかけた私の言葉を遮るようにして 「刑法第四十一条、十四歳に満たない者の行為は、罰しない。でも」  と、神楽は言いかけて首を振る。 「意図的ではなかったにせよ、僕は一人の人間を死に追いやったんだ。母さんが死んだ真相を明らかにするためには、まず自分の罪を告白しないといけない」 「……神楽、でも……私も共犯だよ。ビー玉をあげたのは私だから」  握り締めたビー玉を手のひらに開いて見せる。 「それは、共犯とは言わないよ」  神楽は私の頭をポンとやり、薄く微笑んだ。
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