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彼と昨日あんなにも激しく行為に及んだ。思い出すだけで、顔から火が出そうだ。
「……あぁ、ローゼ。寝起きにローゼを見るなんて、夢なのか?」
至極真面目にイグナーツがそう言葉を零す。どうやら、彼は寝ぼけているらしい。
それに気が付き、ローゼは彼のほうに手を伸ばしてみた。彼はその手を掴んで、自身の頬に添える。
「ローゼは、いつ見ても可愛いな……」
彼が惚けたような声で、そう言う。……完全に、寝ぼけている。
「イグナーツ様。これは夢じゃありませんよ」
イグナーツの分厚い胸を軽くたたきつつ、ローゼがそう言葉を発する。そうすれば、彼の目が大きく見開いた。
「昨日、結婚したじゃありませんか」
追い打ちをかけるようにそう言えば――イグナーツがガバッと起き上がった。それから、自身の頬をつねる。
「……夢じゃ、ない」
何とも古典的な夢か確かめる方法ではあるが、それが一番確実なのはローゼにもわかった。
なので、イグナーツにほんの少し笑みを向けてみた。……その瞬間、ローゼの頬を彼の手が挟む。
「じゃあ、目覚めの口づけをしても、いいんだな?」
「……え」
けれど、さすがにそれは……と思う間もなく、ちゅっと唇が重なった。
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