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「ねぇ、わたしにして欲しい事とかないの? お弁当作ってとか、女の子らしく振る舞ってとか」
「? どうした急に?」
「わたしに合わせて貰ってばかりじゃ申し訳ないというか、その、わたしも片桐の好みになりたいというか」
プリンに続き、ソフトドリンクもテーブルへ置かれた。メロンソーダーの気泡越しに片桐を伺う。
彼はふむ、唸ると頬杖ついた。
「ミユが青山にしてたのは尽くすというより自己犠牲だったじゃん? 俺は無理してないしミユが喜ぶならそれでいい。ミユだって興味の無かったバイクについて調べてくれてるけど無理してる?」
「してない。片桐が好きな物を知りたいの」
「うん、そういうもんなんだって」
「……そっか」
「いや、待てよ」
丁寧な説明に納得しかけると、片桐は何やら思い付いたらしい。
「ミユにお願いしたいこと、あったわ!」
「え、何?」
悪戯な笑顔に嫌な予感がする。
「名前で呼んで。いつまでも片桐呼びじゃ寂しい。ちなみに俺の名前、知ってるよな?」
「あ、当たり前じゃない!」
「だったら呼んで、さぁどうぞ」
「ーーっ」
「おや、聞こえないなぁ?」
きっと、わたしが片桐の名をスムーズに呼べるまでそう時間は掛からないだろう。
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