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そっぽを向きつつ、青山君に対してはこんな自分を曲げてまで付き合おうとしていたのが過る。
「潔いと思う」
「え?」
「ミユの真っ直ぐで不器用な性格、俺は嫌いじゃない。青山に一ヶ月付き合おうって持ち掛けて、きっかり一ヶ月後に振られるなんて正々堂々過ぎる。きっと黙ってやり過ごせれば青山の彼女のまま居られたぜ?」
クククッと笑いを堪える片桐。小刻みに震える振動が伝わり、唇を噛む。
「……そうやって馬鹿にしたらいいよ」
「あのな、バカ正直とは言ったけどバカになんかしてない!」
珍しく怒った声音なので顔を上げる。視線がぶつかると片桐は弾かれたようにわたしと距離を取った。
「だから、その、俺はだな、えっとバカにはしてなくて」
さっきまでの滑らかさを失い、モゴモゴと口を動かす。
「はっきり言ったら? 馬鹿にしてないなら何?」
「それは……まぁ、アレだ! マンゴープリン食べよう。イライラすると甘い物が欲しくなるからな、うん、そうしよう」
露骨に話題をそらされ、カチンときた。そそくさ店内へ逃げ込もうとする片桐の腕を掴む。
「黙ってやり過ごして青山君の彼女でいれば良かった?」
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