溺愛彼氏★失恋したらチャラ男が一途な本性を現しました

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 話しているうち辺りはすっかり暗くなり、頼りない電灯と欠けた月がわたし等を照らす。手首は随分握られ続けて感覚が無くなりつつある。  片桐の告白は驚きに次いで申し訳無さを巡らせ、つまり彼の気持ちに応えられない。これが結論。 「……今日のところはマンゴープリンはお預けという事で帰るぞ、解散!」  わたしから手を離せないと察知したのだろう。片桐は歯切れのよい声で離すタイミングを演出し、力なく戻された腕がぶらぶら揺れて心も揺れる。   「ミユ」  呼び掛けに怒気は含まれておらず、考えてみれば家族を除いて片桐しかわたしを名前で呼ばない。 「振られたからって友達辞めたりしねぇから安心しろよ。明日になれば今まで通りだ」 「友達でいてくれるの? いいの?」  食い気味に聞いてしまい、片桐は頷く。 「当たり前だろ。ミユも変に気を回したりしないでくれよ? 俺、今の関係が壊れるのは嫌なんだ」 「う、うん。わたしも嫌だ」 「暗いから気を付けて帰るんだぞ」 「うん、ありがとう。片桐も気を付けて」 「おぉ! じゃあな」  片桐はニコッと笑う。満面の笑みなのに欠けているような笑顔。  何度か振り返り、その度手を振ってくれる彼を見送りながら、わたしは生まれて初めて月の裏側を見た気がした。
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