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「見てみろよ。青山がまた告られてるぞ」
放課後、片桐の面白がる声にわたしは肩を竦めた。襟足はちくちく首を刺激しなくなったが、胸は変わらず痛くなる。
片桐に告白されてから大きく変わった事はなく、相変わらず馬鹿をして騒ぎ、他愛もない話で笑い、友人関係を維持できている。ただ、それがわたしの胸をこんなにも締め付けるのは想定外だった。
「青山、一体誰となら付き合うのかね? 全員振ってるって話だぜ?」
「さぁ? 勉強とかで忙しいんじゃない? 片桐こそ、最近は全部お断りしてるって聞いたよ?」
ひとつだけ変わった事がある。どうやら片桐はお試しで誰かと付き合うのを止めたらしい。
「あー、それはバイトに忙しいんじゃない?」
質問を質問で返された。
「まっ、ミユにはその辺は関係ないでしょ」
見なくともわたしが不満な顔をしているのが分かるのだろう、片桐が言葉を付け加えた。これは他意はない発言で、わたしを傷付けるつもりなどない。それなのに一本、線を引かれたと感じてしまった。
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