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校庭では部活活動中の生徒や帰宅する生徒も居て、片桐の大声は注目を浴びる。そんな彼等に対し片桐はふふんと鼻を鳴らし、ピースサイン。
「もう馬鹿はどっち! 何してるの! 恥ずかしいからやめて!」
だらしなく着たシャツを引っ張り片桐を教室へ引き戻す。
「だって青山と話した方がいいだろ? ミユ、ずっと悩んだままじゃん?」
「そ、それは」
片桐がーーと言い掛け慌てて飲み込む。胸の痛みはすっかり彼のせいになっていたんだ。
「んじゃ、後はお若い二人に任せて。俺は帰るわ」
バッグを担ぎ、片桐は出て行こうとする。
「帰るって? マンゴープリンどうするのよ!」
引き止めようと伸ばした手は空を切り、片桐が遠い。というより避けられた。
「あいつがミユと別れてから誰とも付き合わないのって、ミユが好きなんじゃねぇ? もう一回ちゃんと話した方がいいぞ。意地張り合ってても、しょうがないだろうが」
首に手をやり、アドバイスしてくる。
「ーーなんで片桐がそういう事を言う訳?」
わたしを好きなんじゃないの? もう好きじゃなくなったの? 余計なお節介に身勝手な主張をしそうになり、彼を睨むに留まる。
「おぉ! 怖い、怖い! 退散しましょう」
睨まれた片桐はわざと肘を擦る仕草をし、踵を返す。
「片桐!」
後を追おうとしたが、片桐と入れ違いで青山君が入ってきた。二人は無言ですれ違い、視線も合わさない。
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