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「青山君、ごめんね? 片桐が迷惑掛けちゃって」
「いや、片桐の言う通りだと思って。用がある側が来るべきだよね。少しいいかな?」
わたしから話は無くとも、申し出を受けると断りにくい。片桐の気配を目で追い掛けつつ、曖昧に首を傾げる。
「いい、けど……何かな?」
青山君に振られた際『思っていたのと違った』と言われた理由は、おしとやかで温厚、マンガに登場するみたいな女の子を一生懸命演じていたからだろう。
わたしは一ヶ月という短期間ですらその仮面を付けられず、がっかりさせてしまったんだ。
青山君と向き合うと理想と現実の差にズキズキして、こういう胸の痛みは少なくとも恋じゃない。よく皆が言っている恋に恋をしていたと今なら分かる。
「髪切ったんだ?」
「え、あ、うん」
青山君が長い髪が好みだと知って伸ばしたものの、ケアが大変、わたし自身が短い髪が好きなのもあって失恋を言い訳に切ってしまった。
「また伸ばしてくれないかな?」
鼻先を擦り、照れた顔で青山君は言う。
「え?」
「あれから僕も考え直した。君は授業の予習をして教えてくれたり、お弁当を作ってくれた。僕の好きなゲームやスポーツを一緒に楽しんでもくれたよね? 僕の為にそこまでしてくれる人は君しかいないかもしれない。他の子に同じ事が出来るか確かめたら出来ないと言われて、君が僕を本気で好きなんだと理解した」
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