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「……それって」
好かれる為の努力を認めて貰えてるのに、全然嬉しくない。なんなら青山君にとって都合のよい女の子を求められているような気持ちになる。
「もう一度、付き合わない?」
この言葉を告げられる妄想を何度もしたけれど、いざ告げられてみたら響かないどころか冷めていき、あんなに眩しく映った相手が霞む。
再び情熱を持って青山君に尽くせるか? 答えは、ノーだ。
「わたしはっーー」
反論しようとしたら唇に人差し指を立てる。
「それから片桐とは仲良くしないで欲しい。片桐なんかと一緒に居たら、君まで先生に目を付けられてしまうよ? 知ってるはずだよね? 片桐がいい加減な奴だって」
「片桐が……いい加減な奴?」
「最初、君に告白された時、片桐と結託して僕に嫌がらせでもするのかと思った。もしくは片桐に脅されて告白してきたのかと。蓋を開けてみたら思ってたのと違ったんだけど」
ペラペラ語る。片桐を何も知らないくせ、滑らかに悪口を生産する。
わたしだって彼の全部を知っている訳じゃないが、お弁当を作りたいと相談すれば手伝い、ゲームやスポーツの話題を仕入れてくれた。
一緒に笑って泣いて、わたしの恋路を誰よりも応援したのは片桐じゃないか。
それなのに。
「ーーカ」
それなのに、わたしってば。
「ん? なんて?」
「バーーカって言ったんだよ! バーーカ! 誰が付き合うか! バーーカ!」
「なっ」
思い切り舌を出すと、呆然とした青山君を置き去りにして駆け出す。
今すぐ片桐に謝りたい。
そして今すぐ片桐に会いたい。
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